筋トレの呼吸法で筋力アップ?バルサルバ呼吸とパッキング呼吸を科学的に解説
「筋トレ中は息を吸う?それとも吐く?」
「重い重量を持つとき、息を止めてもいいの?」
筋トレ初心者なら、一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
実は、筋トレでは「どんな呼吸をするか」が、フォームの安定性や力の発揮に関係することがあります。
特にベンチプレスなどの高重量トレーニングでは、**バルサルバ呼吸(バルサルバ法)やパッキング呼吸(Lung Packing)**と呼ばれる呼吸戦略が研究されています。
この記事では、初心者でもわかるように科学的な研究をもとに解説します。
筋トレで呼吸を意識する理由
筋トレでは、呼吸は単純に「酸素を取り込むため」だけのものではありません。
特にスクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどの高重量種目では、呼吸によって体幹を安定させることが重要になります。
重い重量を持つときに体幹がグラグラすると、力を効率よく伝えにくくなります。
そこで重要になるのが、
「腹圧」
です。
息を吸ってお腹や胸郭を膨らませ、体幹に圧力を作ることで、身体を安定させやすくなります。
つまり、
「呼吸=酸素を吸うだけ」
ではなく、
「呼吸=力を発揮するための体幹安定にも関係する」
と考えるとわかりやすいでしょう。
ベンチプレスでは呼吸法でパフォーマンスが変わる?
2021年、チェコ・カレル大学などの研究者らは、24人の男性を対象に、ベンチプレス1RMで異なる呼吸方法を比較しました。
比較されたのは、
- バルサルバ法
- 息を止める方法
- パッキング呼吸
- 逆呼吸
などです。
その結果、バルサルバ法とパッキング呼吸では、ベンチプレスの「スティッキングポイント」を通過する時間が短くなりました。
スティッキングポイントとは?
ベンチプレスでバーを胸から押し上げるとき、
「ここから急に重くなって動かない……」
と感じる場所があります。
これがスティッキングポイントです。
最大挙上重量に挑戦するとき、このポイントを突破できるかどうかが成功のカギになります。
呼吸法によって身体を安定させることで、この難しい局面を効率よく突破できる可能性があるわけです。
バルサルバ呼吸とは?
バルサルバ呼吸とは、簡単にいうと、
息を吸って腹圧を高め、一時的に息を止めながら力を発揮する方法
です。
例えばベンチプレスなら、
- バーをラックから外す
- 息を吸って胸郭・お腹を膨らませる
- 体幹を固める
- 息を止めた状態で押し上げる
- 動作後に呼吸を戻す
というイメージです。
高重量を扱うパワーリフティングなどでは、体幹を安定させるために利用されることがあります。
ただし、初心者がいきなり限界重量で長時間息を止める必要はありません。
まずは、
「息を吸って体幹を固める感覚」
を身につけることから始めましょう。
パッキング呼吸とは?
パッキング呼吸は、バルサルバ法よりもさらに肺に空気を入れた状態を作り、体幹や胸郭の圧力を高める呼吸方法です。
ただし、これは「パッキング呼吸なら誰でも重量が大幅に伸びる」という意味ではありません。
研究対象は24人の健康な男性で、1RMベンチプレスという特殊な高強度条件です。
そのため、初心者が通常の筋トレで同じ効果を得られるとは限りません。
ここは非常に重要なポイントです。
「13.6%筋力アップ」は本当?
SNSなどでは、
「パッキング呼吸でベンチプレスが13.6%アップする」
という情報を見かけることがあります。
しかし、ここは注意が必要です。
研究結果をそのまま、
「呼吸法を変えれば誰でも筋力が13.6%アップする」
と解釈するのは適切ではありません。
つまり、
呼吸法だけで筋肉が13.6%増えるわけではありません。
筋力アップには、
- 筋トレの継続
- 適切な重量設定
- 十分な休養
- タンパク質・エネルギー摂取
- 睡眠
- 正しいフォーム
など、複数の要素が関係します。
呼吸法は、その中の「力を発揮するためのテクニック」の一つと考えるのがおすすめです。
2026年の最新研究では何がわかっている?
2025年に発表され、2026年に掲載された研究では、筋トレ経験が2年以上ある男性12人を対象に、ベンチプレス中の呼吸方法を比較しました。
研究では、
- 持ち上げるときに息を吸う
- 持ち上げるときに息を吐く
- 持ち上げるときに息を止める(バルサルバ法)
という3つの方法を比較。
その結果、呼吸方法によってセット完遂数、トレーニングボリューム、主観的運動強度などに違いが確認されました。
ただし、この研究は12人という小規模な研究であり、ベンチプレスだけを対象としています。
そのため、
「これがすべての筋トレ種目に当てはまる」
とはまだ言えません。
最新研究として興味深い結果ではありますが、今後さらに大規模な研究が必要です。
初心者はどう呼吸すればいい?
ここが一番重要です。
筋トレ初心者の場合、いきなり高度なパッキング呼吸を練習する必要はありません。
まずは基本を覚えましょう。
基本は「力を入れる前に吸う」
例えばスクワットなら、
①しゃがむ前に息を吸う
↓
②お腹を360度膨らませる
↓
③体幹を固める
↓
④立ち上がる
↓
⑤安全なタイミングで息を吐く
というイメージです。
軽い重量なら、無理に息を止める必要はありません。
「呼吸を止めること」よりも、
「体幹を安定させること」
を意識してください。
種目別の呼吸の基本
スクワット
下ろす前に息を吸って体幹を固め、立ち上がる局面で力を発揮します。
デッドリフト
バーを引く前に息を吸って体幹を固め、引き上げます。
ベンチプレス
バーを下ろす前に息を吸って胸郭・体幹を安定させ、押し上げます。
ダンベルカール
比較的軽い種目では、自然な呼吸を続けながら、
「力を入れるときに息を吐く」
という基本から始めても問題ありません。
息を止めればいいわけではない
ここは初心者が最も勘違いしやすいポイントです。
「筋力を出すなら息を止めればいい」
というわけではありません。
バルサルバ法は、体幹を安定させる一方で、血圧が大きく変動する可能性があります。
そのため、
初心者が毎回限界重量で長時間息を止めることはおすすめできません。
特に高血圧や心血管系の疾患などがある場合は、自己判断でバルサルバ法を行わず、医療専門家に相談してください。
筋トレ初心者におすすめの考え方
初心者なら、まず以下の順番で覚えていきましょう。
STEP1
自然に呼吸する
↓
STEP2
力を入れる前に息を吸う
↓
STEP3
お腹を膨らませて体幹を固める
↓
STEP4
高重量になったら、必要に応じて短時間の息止めを検討する
↓
STEP5
フォームと安全性を最優先する
この順番で十分です。
呼吸法は「筋トレの裏技」ではありません。
正しいフォームを安定させるためのテクニック
として考えると、初心者でも理解しやすくなります。
筋トレの効果をさらに高めるなら「呼吸」以外も重要
筋力アップを目指すなら、呼吸だけに注目するのはもったいありません。
重要なのは、
- 適切なトレーニング量
- progressive overload(漸進性過負荷)
- タンパク質摂取
- 十分なカロリー
- 睡眠
- 休養
- 正しいフォーム
です。
特に初心者の場合、
「呼吸法を極める」より「週2〜3回の筋トレを継続する」
ほうが重要です。
呼吸法は、基本ができてから少しずつ取り入れていきましょう。
筋トレ用アイテムを活用するのもおすすめ
トレーニングを継続するなら、環境を整えることも重要です。
例えば、
- トレーニングベルト
- トレーニングベンチ
- ダンベル
- リストラップ
- フォームローラー
などは、自宅トレーニングや高重量トレーニングの環境づくりに役立ちます。
特にトレーニングベルトは、腹圧を意識する際の補助として利用されることがあります。
ただし、ベルトを巻けば勝手に腹圧が高まるわけではありません。
「自分で腹圧を作る」→「必要に応じてベルトを活用する」
という順番がおすすめです。
当サイトでは、筋トレ初心者でも選びやすいトレーニング用品を比較して紹介しています。
まとめ|筋トレでは「呼吸」も立派なトレーニングテクニック
今回のポイントをまとめます。
- 筋トレでは呼吸が体幹の安定や力発揮に関係する
- 2021年の研究ではバルサルバ法・パッキング法がベンチプレスのスティッキングポイントに有利な結果を示した
- 2025〜2026年の研究でも呼吸方法によるパフォーマンスの違いが報告されている
- 「13.6%アップ」は誰にでも当てはまる筋力向上率として考えない
- 初心者はまず自然な呼吸と腹圧を意識する
- 高重量での息止めは血圧上昇などに注意する
- 筋力アップには呼吸法だけでなく、筋トレ・栄養・睡眠・休養が重要
筋トレでは、重量や回数ばかりに目が行きがちです。
しかし、
「いつ吸うか」
「いつ吐くか」
「どうやって体幹を固めるか」
まで意識できるようになると、トレーニングの質をさらに高められる可能性があります。
まずは次回のトレーニングから、重量を無理に増やすのではなく、
「息を吸って体幹を固める」
という基本を意識してみてください。
小さなテクニックの積み重ねが、長期的な筋力アップにつながります。
参考研究
Blazek D, et al. The effect of breathing technique on sticking region during maximal bench press. Biology of Sport. 2021;38(3):445–450.
Deniz IE, Erdemir I. Influence of breathing strategies on maximal strength output and hemodynamic parameters during bench press exercise. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2026.
